私の出会った人々

「友へ」

 藤井輝明さん(以下藤井さん)は故松下幸之助氏が私塾として立ち上げた松下政経塾(京都)でともに学んだ同志である。藤井さんは、海綿状血管腫という病気のため顔に瘤状の大きな痣があった。そのため子どもの頃から酷いいじめに遭い、大学卒業前の就職面接では、面接官から「その化け物みたいな顔では営業は無理だね。」と言われた。藤井さんが名古屋大学医学部の大学院生、私が中学校教員をしている時、藤井さんの誘いで京都市内の銭湯で高齢者や障害者の入浴を介助させていただく無償ボランティアに参加させていただいた。「どこか痒いところはないですか」と笑顔で利用者の背中を流す藤井さんの顔には大粒の汗が滴りとても美しかった。「僕の顔の痣を嫌って避けられる利用者の方もあるんですよね」と寂しそうに語る藤井さんの言葉に胸が締め付けられた。その後、熊本大学鳥取大学の医学部教授の激務の中、藤井さんは、全国の学校を飛び回り、自分の瘤状のふわふわした痣を子どもたちに触ってもらうことで見た目差別の解消に尽力した。令和3年の春、勤務していた大学から自転車で帰宅途中、享年64歳で突然天に召された。子ども好きだった藤井さんの5月5日の逝去の報に涙があふれた。脳梗塞から京都府中丹支援学校に副校長で職場復帰、定年退職した私に再会を楽しみにしていると電話してくれた矢先のことであった。「山口さん、僕は笑顔で生きると決めたんです」という藤井さんの遺してくれた志は、今も私の胸に清々しく生き続けている。
 先日、ノンフィクション作家であり、ジャーナリスト、評論家、ユニークフェイス当事者運動の創始者でもある石井政之さん(以下石井さん)が、福知山市の私の自宅を訪れた。石井さんがYouTubeで発信する石井さんと私の対談を撮影するためである。対談の内容は、藤井さんと私との交流のYouTube版。石井さんのナビに私が応えるスタイルで対談は進む。対談では私目線での藤井さんの実像を語る。石井さんも顔に痣があり、藤井さんは、石井さんと私の共通の友でもある。
 「ユニークフェイス・チャンネル 第1回 藤井輝明さんについて語る 」より