私の出会った人々

「茶粥」

 「おかいさん」といわれる奈良の「茶粥」は、煮出したほうじ茶の中に冷やごはんを入れて炊いた奈良の代表的な日常食。

 当時奈良県五條市立五條中学校教諭だった私は、京都府にあらたに赴任するため住み慣れた奈良県五條市のアパートから引っ越すこととなった。引っ越しの数日前、アパートの前に住んでいらっしゃった大家さんに招かれ、「これからの君の幸せを祈ってるよ」と大鍋に炊かれた茶粥をご馳走になった。初対面の日が最後の日となった大家さんの優しい眼差しとはじめて食べた茶粥のほうじ茶が醸し出すまろやかでおだやかな味わいを今も忘れない。大和の人情厚きことを再認識した瞬間でもあった。

 先日起業家として活躍中の五條市立五條中学校の教え子の1人と福知山駅で再会した。TVでもお馴染みの写真家、世界中を飛び回っている外交官等々当時の多士済々の教え子たちと茶粥を囲んで同窓会がしたいと夢見ている。